ワイヤレス充電は新たなエネルギー問題を生み出す?iPhoneは例の磁石で回避か

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by メカ村

最近スマホの標準機能となり始めているワイヤレス充電、iPhoneではiPhone 8/8 Plus/Xから採用され、当時はApple製の純正ワイヤレス充電器AirPowerも発売されると発表された事もあって大きな関心を集めました。

しかしワイヤレス充電はスマホの使用方法や使用環境からあまり流行ってるとは言い難いのですが、最近になってスマホがワイヤレス充電に移行していく事で新たなエネルギー問題が生まれる可能性が示唆されています。

思った以上に効率が悪い

内部に充電池を持ちその電力で動くデバイスは、充電時の電力を100%すべて充電池に充填できるわけではなく、一部が熱エネルギーとしてロスになっているという話は意外と世間一般に知られておらず、充電時に端末が温かくなる=電気をロスしている事になります。

これはスマホでも同様に発生している問題で、USBケーブルなどで有線充電すると人肌かそれ以上の温度になっているのを体感した事がある人も多いと思うのですが、ワイヤレス充電はこれよりも顕著に温度が上昇する事が確認されています。

これはワイヤレス充電がコイルを利用した磁界結合方式(電磁誘導方式)である事も大きな原因で、有線充電よりもロスが多い事が確認されており、具体的にはPixel 4を利用した実験では有線充電に使用した電力が約14.26Wh、ワイヤレス充電では21.01Wh消費していました。

効率で言えばワイヤレス充電は有線充電よりも充電効率が悪く、一般家庭では問題にならない程の電力量ではあるものの、世界にある30億台のスマホがワイヤレス充電のみに切り替わるような未来なら話が変わってきます。

上記のPixel 4の実験を実施したエリック・レイヴンズクラフト氏は実験とワイヤレス充電普及の関係から、「この技術の普及により、世界中に数十の新しい発電所の建設が必要になる場合があります」と、スマホに消費される電力が30億台x約47.3%増える事がいかに大規模な問題であるかを説明しています。

スマホをより強固な防塵防水性能を持たせようとする考えから、外部端子や物理パーツの無いワイヤレス充電端末の構想がありますが、これが浸透してすべてのスマホがこの方式に置き換わった場合、レイヴンズクラフト氏の訴えは実現し大きなエネルギー問題になるでしょう。

最近iPhone 12のリークとして発表された円状の磁石パーツは、このワイヤレス充電によるエネルギーロスを少なくするための固定具だと考えられており、AirPowerが「どの部分での充電できる」使用で極端にエネルギーロスの大きい充電器に仕上がった故に、発売中止に至った可能性が高いです。

iPhone 12シリーズ向けの磁石固定式ワイヤレス充電器が登場するのか、AirPower内部に同様の磁石を配置してロスが少なくなるようになるかはわかりませんが、少なくともAppleはワイヤレス充電が想定以上のエネルギーロス問題を抱えていた事を知っていた可能性があります。

まとめ

なかには「ワイヤレス充電になったところでそんな問題になるはずがない」と楽観する人もいるでしょうが、実際世界でのエネルギー消費は年々増加傾向にあり、エネルギーが有限のものである以上エネルギーロスは無視できない問題と言えます。

アピールのためだけに新技術を搭載しエネルギーロスを生み出すのは、これからのエネルギー問題に取り組むべきIT企業として愚かとしか言いようがありませんから、使い勝手が悪くエネルギーロスの大きい完全ワイヤレス化だけは採用しないでもらいたいところですね。

参考:iDROPNEWS

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