スマホはカメラ業界を衰退させた?10年で出荷台数が1/8まで落ち込み撤退も

2007年6月29日に初代iPhoneが発売されスマホは急速な勢いで普及し、今や誰もがスマホを持つような時代になったワケですが、その影響はなり替わられたガラケーのみならず様々な分野や業界へ多大な影響を及ぼしています。
特にスマホには高性能なカメラが搭載されており、かねてよりカメラ業界への影響が懸念されていたのですが、ここ10年ほどでその影響はとんでもない規模になっているそうです。
スマホカメラを甘く見た?
2000年頃から2010年頃まではいわゆるガラケーが主流であり、カメラは搭載されているものの当時の通信網や通信費の関係からそこまで高画質な写真を送受信したりする機会も少なく、今よりも写真を撮る機会は圧倒的に少なかったでしょう。
そして2010年頃からスマホが普及し始めるものの、カメラ業界にとってはデバイスの形状などが変わるだけでガラケーとさほどカメラ機能の在り方が変わるとは思っておらず、スマホカメラの将来性についてかなり甘く見ていたのかも知れません。
カメラ映像機器工業会の調べによると、2010年から2019年までの10年間で日本のカメラ企業によるカメラ出荷台数は1億2146万台から1521万台まで減少、たった10年でおよそ1/8になるほどの市場縮小が確認されています。
以前はカメラを趣味として多くの人が高価なカメラを購入し、日常から思い出まで様々なシーンを撮影し現像していましたが、スマホとSNSの普及により写真撮影は急速に誰もが行う身近なものに変わったものの、デバイスまでスマホに置き換わってしまいます。
特にiPhone 5Sがリリースした2013年頃から出荷台数の減少が加速していますが、これはスマホがコンデジ並の性能を標準搭載するようになった影響で、高価なカメラはさておきコンデジを買うくらいなら普段使いのスマホはカメラ性能が良いものを、という傾向が見て取れます。
実際にカメラ部門での各社の営業利益はSONY以外が減少傾向であり、ここ数年赤字が続いてしまったオリンパスはデジカメを含む映像事業を分社化し、投資ファンドに売却してしまう事を6月24日に発表したそうで、同社のカメラ部門経営不振が事業部そのものを切り離す深刻なレベルに達している事を物語っています。
またカメラ事業を持つ企業に限った話ではなく、カメラにまつわる事業を展開している企業にもその影響は出ており、例えば総合カメラ雑誌アサヒカメラも1926年創刊からの94年間に幕を閉じ2020年7月号で休刊と、老舗カメラメディアが撤退するほどです。
この衰退には少なからず新型コロナウイルスの影響もあるでしょうが、スマホが下手なデジカメよりも高性能なカメラを搭載した事は、カメラ業界にいる人々にとって大きな誤算だったのでしょうね。
まとめ
高価なカメラは何年何十年と使用する事が多いそうですが、スマホはざっくり2年前後で買い替えてしまう上にそのたびカメラ性能が良くなりますから、わざわざスマホとは別にカメラを買う人は写真を生業としているか、本気の趣味としている人に限定されているのでしょう。
スマホの高性能カメラも長いカメラの歴史と技術研鑽の上に成り立つものですから、このまま衰退してしまうのではなく、スマホとの棲み分けを進め一般の人にも「一家に一台カメラ」を実現してくれるような商品を開発して欲しいですね。