Apple Cardの普及で小売店とカード業者の論争が表面化か

アメリカでは、Apple Cardがリリースされて以来初めての大型商戦であるブラックフライデーが終わりました。
Apple CardはiPhoneユーザーにとっては支出の管理がしやすく、またセキュリティも他のカードよりも高くなっているため最もよく使われていたカードの一つになりましたが、小売店にとってはあまり良い話ではないようです。
Apple Cardがアメリカの小売業者に嫌われてる理由
実はApple Cardは小売業者にとって不利益となる場合もあるのです。
これは、Appleが販売し、ゴールドマンサックスが支援するApple Cardが「エリート」に指定されているためです。
「エリート」に指定されているカードは、決済ごとに他のカードに比べ大幅に高い手数料を販売店から徴収できるようになっています。
つまり、客側がApple Cardを使って購入した場合、店側は通常よりも高い手数料をカード業者に納める必要があるのです。
この余分な金額は、例えばVisaカードで見てみると、通常1.27ドルの手数料が1.75ドルになります(3割程度の増加)。
なぜApple Cardの手数料が高額に?
それでは、なぜApple Cardのような一部のカードだけ通常の手数料よりも高くなってしまうのでしょうか。
Bloombergは以下のように説明しています。
Card networks tell merchants the higher costs are justified because premium cardholders also have more buying power—so they’ll spend more.
(VisaやMasterCardなどの)カード業者は、(Apple Cardなどの)プレミアムなカードの所有者の購買力が他と比較して高いことを小売業者に伝え=、追加でかかる手数料などの費用を正当化しています。
例えば、2018年1月以降、プレミアムブランドのVisaカードで行われた購入額は、通常のVisaクレジットカードで行われた購入額よりも平均で50ドル(5千円)高くなっています。
このようなデータを盾に、Apple Cardの手数料も「Apple Card所有者は比較的に高い買い物をする」という前提で高額になっています。
店側はカードを選べない
ところが、店側の不満は膨らんでいる一方です。
当然と言えば当然ですが、店側は支払われるクレジットカードを選択できません。
もしも、Visaカードブランドを採用していれば、それはプレミアムか否かに関わらず、全てのVisaカードを等しく受けいれなければなりません。
さらに、近年はクレジットカードの普及が爆発的に進んだため、関連する費用が増加の一途を辿っていることもあり、店側の負担が増加してきているのです。

Bloomberg: 黒線が小売業者の手数料の増減(前年比)
実際、アメリカでは一部の大型店舗でさえ、時代の流れに逆らうようにVisaの取り扱いをやめる店も出てきています。
それに加えて、今爆発的に普及しているApple Cardが「エリート」カード、いわゆるプレミアムカードに指定されているためさらなる負担が予想されています。
このような背景から、Apple Cardが今後、小売業者とVisaおよびMastercardネットワークとの新たな交渉の起爆剤になるのではと言われています。
日本でも普及し始めた場合、同じようなことが起こるかもしれませんね。