「Bye Bye Camera」写真から人を削除できるカメラアプリを試してみた

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by しんや

すべての人間を写真から消してくれるアプリBye Bye Cameraが登場しました。

Bye Bye Cameraを使えば写真の中から人間だけを消し去り、人のいない風景画が取れるということなので早速ダウンロードして試してみました。

Bye Bye Cameraで本当に人は消えるのか?

Bye Bye Cameraは、一般公開されているAIツールYOLO(You Only Look Once)を使い人間のオブジェクトを特定し、その範囲を背景で塗りつぶします。

まずはBye Bye Cameraが提示したサンプルを見てみましょう。左側の写真ではストリートの真ん中に男性が佇んでいますが、加工後の右側では丸々消えてしまっています。

次はArtnomeよる犬を抱えた成人男性の写真です。こちらの場合、男性と犬が両方とも消えています。

実際に試してみた

なかなかに綺麗に消えており、同じような写真を筆者も撮りたい!と思い意気揚々と撮影をしたのですが、結論からいうとイマイチでした。

例えば、風景を撮っていて小さく写り込んでしまった人を取り除ければ、今後出先で人が多くても綺麗な自然の写真が取れるのではと期待して早速試してみましたが残念ながら小さすぎるためか遠くに移る人については全く認識してくれませんでした。

画面中央やや右寄りの黒い人物を消したかったが認識されず

それではと、今度は中距離の歩く人を撮影しましたが、結果は似たようなものでした。それどころか、人ではない車が消える始末。

そして、どうやら「後ろ姿の人は高確率で認識されない」ようです。これはいくつかの背景や距離で試しましたが大体似たような結果になりました。

これでは人が多い観光地で綺麗な写真を取るという筆者の夢が達成できません。

色々試していて、一番効果を感じられたのは木を背景にした自撮り画像ですが、出来上がりが少し雑な点と、そもそも自撮りしているくせに自分の顔を消すというのはなんとも間抜けな話です。

そういったわけで、このBye Bye Cameraは筆者の期待には応えてくれなかったわけですが、しかし、これはある意味で仕方がないことなのかもしれません。

Bye Bye Cameraは実用的ではなくアーティスティックなツール

というのも、そもそもBye Bye Cameraは前述したような実用的目的で設計されたわけではないからです。

Bye Bye Cameraは「自撮りや個人といった虚栄をすべての写真から取り去る」ためのアプリで、人類が滅亡した「ポストヒューマン時代」のためのカメラアプリを作るというなんとも崇高な理念を表現するために作られたアート作品なのだそうです。

このアプリを作ったアーティストのdamjanskiさんは「人は何かという疑問をAIという観点から考える取り組み」と話し、AIによって人間と分析された写真の中の私たちは何をもって人間として扱われたのかという疑問を投げかけます。

実際、歴史的に振り替えればアートにおける私たち人間の描き方や扱いというのは熱心に議論されてきました。

例えば、写真のない時代において人をリアルに描く肖像画の絵師は高く評価され活躍していた一方、極端な抽象化によって人を再構築しようとしたピカソや「叫び」というテーマを表現するためにあえて人を歪めて描いたムンクなど、人をありのままに描かないという画家もまた多く活躍していました。

しかし、小型カメラやスマホの普及により、あまりにリアルな人物を手軽に映し出せるようになったおかげで、アーティストなどの一部例外を除き、私たち一般人はそのような議論と無縁になりつつあります。

そのため、現代では彼の「AIという観点から人というものを再考する」取り組みはアート的観点からみれば非常に価値のある取り組みなのかもしれません。

そんなわけで、このBye Bye Cameraはかなり人を消すことができないポンコツアプリではなく、かなりクールなアート作品と言えるわけです。

byebye.camera

参考:artnome.com

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