Google Chromeの広告ブロック機能は来月で使えなくなる?

広告ブロックツールが一部無効になるかもしれないというChromeへの機能変更案に対する批判がGoogleに向けられており、同社はすでに一部の規制緩和を決定しています。
なぜかGigazineが報道してくれなくなったのでいよいよ誰も報道しないChromeの広告ブロック潰し問題。Googleは強引にV3の採用を継続。Canaryで7月末にリリースされるという。Google社員のSimeon Vincentの情報。GはwebRequestを一般に利用不可にしdeclarativeNetRequestに置き換え。現状で静的ルール3万 https://t.co/3EWEGXnaNu
— 高梨陣平 (@jingbay) 2019年6月25日
しかしその規制緩和が広告ブロックツールにとってまだまだ十分とは言えないまま、機能変更が予定されている7月を迎えようとしています。
なぜChromeで広告ブロック機能が使えなくなると危惧されているのか
そもそも、なぜChromeで広告ブロック機能が使えなくなると危惧されているのか。事の発端は昨年の10月に遡ります。
Googleは2018年10月にChromeの拡張機能を改良する計画の一部として、広告ブロック拡張機能の動作を制限するAPI(開発者が拡張機能の開発時に利用するツール)変更を盛り込みました。
従来、広告ブロックの開発者たちはwebRequestと呼ばれるAPIを使用してネットワークリクエストを拡張機能側で処理しWebコンテンツのブロックや変更などを行ってきました。
ところが、近いうちの変更では、この処理がChrome側で行われるようになるのです。さらに、Chorme側で拡張機能側からリクエストされた処理の無効化をすることも可能になっています。
さらに悪いことに、広告ブロックツールが使えるルールの数も3万件に制限され、これは一般的に利用されている広告ブロックのためのルールである7万件に比べると大幅な足枷となっています。
例えば、現時点のChromeでは、大量のルールの使用が認められているため、広告ブロッカーがウェブサイト上のポップアップ広告、画面を塞ぐ悪質なカウントダウン広告や画面の大半を占めたまま追従する広告、自動再生の動画や音声などを膨大なルールのリストに照らし合わせて行っていますが、その精度に悪影響を及ぼしかねません。
後に、この制限はGoogle側によって15万件へ修正されましたが、この15万ははあくまで全体のルールに対する制限の数であり広告ブロックのために使える数はより制限されるでしょう。
実際15万件を超えるルールを使用しているツールは多く存在するため依然としてこの変更は開発者にとってボトルネックになりそうです。
これにより、複雑なブロッキングアルゴリズムが利用できなくなるだけでなく、開発者たちによる新たなフィルタリングエンジンの登場も阻害されるでしょう。
Google Chromeに表示される広告は確実に「増える」
具体的にどのような変化が起きるかというと、これまで消えていた広告が消えなくなり、さらに悪いことに複数の広告ブロッカーを併用したとしても、Chromeに表示される広告は減らなくなります。
加えて、広告ブロックを利用したほうがブラウザのパフォーマンスが速くなるというデータが示されているため、私たちのユーザーエクスペリエンスの低下も考えられます。
ただし、法人向けChromeブラウザのユーザーはこの変更の影響を受けません。
今後しばらくは、広告フリーのブラウジングを楽しみたいのならChromeを捨ててFirefoxやOperaなどが選択肢にあがるでしょう。
Braveというブラウザは広告を表示することでユーザー側にお金が支払われる仕組みとなっているなど斬新なブラウザも存在しています。
Googleの目的は本当に広告ブロックを潰すことなのか
開発者たちの、Googleはアドブロッカーの排除や弱体化を目的としているという批判に対して、同社は「広告ブロッカーを含む開発者たちがユーザーのプライバシーを保護したまま拡張機能を作成できるようにするためのお手伝いである」と主張します。
言い換えれば、Googleとしては広告ブロッカーを安全なものにするためのやむを得ない制約であると主張しています。
同社のブログでも、「広告ブロッカーの排除や弱体化を目的としているという憶測と、それに対するさまざまな混乱や誤解が見受けられるが、断じてそのような目的ではない」と説明されています。
しかし、プライバシーとセキュリティの保護が目的ならば、広告ブロッカーを最大限に活用して悪質な広告を取りこぼすことなくブロックする方が有益なようにも見えますし、まずはAPIの変更以外にも方法があるのではという意見も存在しています。
Vincentはルール数制限は決定でなくまだGが分析の上で決定するという。Gは今回の変更の理由をパフォーマンスとセキュリティを理由としていたがパフォーマンスについては多くの広告ブロックを利用したほうが速くなる点を指摘されるとセキュリティが主眼だと主張を変えているhttps://t.co/WEb1LDQlZQ
— 高梨陣平 (@jingbay) 2019年6月25日
そのため、主な収入源が広告であるGoogleが広告ブロッカーの機能を制限することでその分の広告収益を増やすことが目的ではという見方が根強く残っているのです。
また、Chromeは純正の広告ブロック機能を7月9日からリリースする予定で、その内容は「広告を全て消す目的」ではなく「悪質な広告の表示のみを防ぐ目的」で設計されています。
つまり、Googleは広告を「適切に」表示したいと考えていて、広告ブロッカーの開発者は広告を「完全に」消したいと考えているため、両者の主張が折り合わないまま7月を迎えようとしているのかもしれません。